ボランティア研修会「日本語ゼロ初級者の指導方法」

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8月3日(金) 夏期ボランティア研修会 第1日
講師 : 堀 玲子 先生(YMCA教師、KEC日本語学院教師)
演題 :「日本語ゼロ初級者の指導方法」
- コミュニケーションツールとしての「にほんご」獲得のために -
( 序 )
* ここでいう日本語ゼロ初級者とは「あいうえお」も分からない、「こんにちは」と言っても「お名前は」と聞いても分からない学習者たちのこと。少しはしゃべれても、日本人が話す日本語を聞いたら全然分からないというのもこのゼロ初級者の中に入ります。
* ゼロ初級者をどう教えたら良いか: 英語が分かる学習者だったら英語で教えればいい、といった考え方もありますが、日本語学校というのは大体いろいろな国の学習者の混成なので、やはり最初から日本語で通すことになり、あまり媒介語を使うことはできません。
* どんな方法で教えれば一番有効であるか: この方法でやると絶対に日本語が上手になる、絶対に日本語は分かってくれますよという方法は実際にはありません。学習者にもよるし、その個性にもよるし、学習者が何を望んでいるかにもよります。
* それなら、どうやって教えればいいか: 先ずはその学習者の国のことをこちらが知りたいと思うことだと思います。本当にその学習者に興味があって、その学習者と仲よくなりたい、その国のことを知りたいと思い、日本語を教えるのではなくて、その国のことを知りたいから少しでも日本語を知ってもらいたいという気持ちで接することが一番かな、というのをずっと感じてきました。

* 具体的にはどうすればよいか。
   まず、(学習者が)日本語を最初に勉強するのは、コミュニケーションをとりたいからその道具として(ツールとして)日本語を勉強するわけです。(教える日本人としては)日本の伝統とか文化とかを知ってもらいたいという気持ちがありますが、そちらから入ることは絶対にできません。それを教えようとすると語彙が難しすぎます。
  必要なのは、相手に対する興味だと思います。そして相手の学習者もこちらに興味を持ってくれるようにするにはどうしたらよいか。こちらの思いが相手に伝わらないといけないので、言葉で伝えようとしてもまだ言葉は全然獲得していないから、最初は笑うしかない。笑みです。

Ⅰ.にほんご学習の協力者として
1. 準備する事と物
  * 学習者に関する情報:学習者にほほ笑みかけるためにも、学習者のことを知りたいと思うためにも、前もって情報を手に入れたほうがいい。国の何処か、性別、留学生か定住者か等
  * シナリオを作る:日本語学校では台本のような形で教案を作ります。
今日は何を教えるかまず目標を立て、この目標に向かってやりとりを台本にします。そして使用する語彙も書いておき、その提出順序を決めておきます。
* 教材を揃える : 絵カード、写真、実物など。ただし、写真はいろいろな情報が入りすぎていると危険です。初級者にはシンプルな絵カードのほうが分かりやすい。
 
2. 学習時間内には
* まず最初は笑ってください。明るく、暖かく。― 学習者はとても緊張しているので、リラックスさせなければなりません。知らない国、知らない言葉ですごくストレスになっています。
* 学習者の発話を辛抱強く待ってください。― あまりしゃべらない学習者のレベルが低いとは限りません。間違えるのが怖くてしゃべれない場合がよくあります。辛抱強く待って、うまくしゃべれたら大きくうなずいて、いいね、という顔をしてあげてください。
* 声の大きさ、話すスピードは適切に。― はじめの段階では、ゆっくり過ぎるぐらいゆっくりと話してください。早いと言葉が全部つながって聞こえてしまいます。
* 内容は学習者のレベルに合わせて。― ゼロ初級者というのは「わたし」というのも新しい語彙です。日本語学校で教える場合は習った言葉しか使いません。矢継ぎ早に新しい単語は出さないほうがいいと思います。
*「教えよう」と頑張りすぎないこと。― 何とか早く覚えてほしいとの思いやりからでも、押しつけになってはならない。

3.振り返り
    学習後家に帰って思い出してください
  * 学習者はどのような人でしたか:どの程度しゃべったか、どの程度の能力だったか、性格はどんな人だったか、ちょっと思い出して次の作戦を立ててください。
  * 学習者の表情はどうでしたか。:喜んでいたのか、積極的だったのか。本当に分かって聞いていたのか、ただ合わせていたのかもしれないし、その辺のところも理解していただきたい。
* 一方通行になりませんでしたか:一方通行になっていると学習者の方もいやですから、興味のある話題を選んで進めていただきたい。
* 成果を求めすぎませんでしたか。:チョットだけしか覚えられない人には少しずつ、どんどん覚えていけそうな人には、この次この次と出してあげてください。

★★★ 以上は堀先生のお話の要旨を記録しました。★★★

Ⅱ.日本語学校における教室活動の紹介
* 模擬授業と解説
ボランティア6人がゼロ初級の外国人学習者に扮した模擬授業を見学した。語の提出順序、語や文型定着のための反復のやりかた、絵カードの提示のタイミングなど、日本語だけで教える方法は大体固まってきているとはいえ、さすがベテランの先生だなと感心しました。

今日の堀先生のお話は大変参考になる部分はありましたが、毎日授業のある日本語学校と1週間に1.5時間の市岡日本語教室とでは違いが大きすぎるので、実情に合うようにうまく取り入れざるを得ないと感じました。
(2班、H.I.)

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